2010年02月03日

研修科課題研究 第二回 ゼミ発表のコツ29、シナリオの読み方



研修科課題研究 第二回 ゼミ発表のコツの
最後の回です。

今回は特に、研修科の発表特有の「音読」に
着目してみました。


研修科では、声に出してシナリオを読みます。

研修科がなぜ、「音読」を通して
まぁ、シナリオをコピーして全員に配る費用を浮かせるため
という予算的なこともあると思うのですが

スクールの先生達からはよく

シナリオを目で追うだけでなく
実際に声に出して読んでみることで
セリフの感触を味わえる、ということが
言われています。

確かにシナリオを黙読するだけでは、
セリフのリズム、情感が伝わりにくいのに対し
シナリオを直接読むことによって、
セリフが生き生きと伝わりますし
書いていて違和感が無くても
読んでみておかしいセリフは、修正することができます。

セリフに関しては、私達が書いたセリフを
実際に俳優が演じるわけです。

私達が書いたセリフの意味、ニュアンスを考え
仕事として真剣に向き合い
演じるわけです。

実はセリフを書くという作業は
俳優にそれをしゃべらせる、演じさせる
責任の思い執筆作業です。

実際に演じられるセリフかどうかは
読んでみないと分りません。

だから、研修科においてセリフを読むということは
重要な課題の一つになると同時に
私達に、仕事として成立するセリフを書く意識を高める
よい訓練になるでしょう。


また、セリフだけてなく、ト書きも
読むことによって
聞き手である受講生に、その情感が伝わるでしょう。


次のト書きを、次の例を使って
淡々と読んでみましょう。

――――――――――――――――――――――――――――

○テレビ
   庭が映っている。
   庭の中心には石造りの井戸。
   井戸の中から女の手が伸びてくる。
   女の手、井戸の淵をつかむ。
   井戸の中から女が這い上がってくる。
   女の長い黒髪が顔を覆い隠している。
   女、井戸を出てどんどんテレビ画面に近付いてくる。
   女、テレビ画面から外に出てくる。

――――――――――――――――――――――――――――


次に同じト書きを、
抑揚、リズム、強弱をつけて読んでみましょう。

リズムや抑揚を示すために
本来ト書きには書かない記号や太字を
用いています。

「太字」は、少し強調してハッキリと読むとろ。
「!」は少し大きめな声で強調して読むところ。
「……」は余韻をもたせて読むところ。
「行間の空白」は少し間を空けて読むところで
 あける行数だけ、間を空けて読むところ。


――――――――――――――――――――――――――――


○テレビ
   庭が映っている……。


   庭の中心には石造りの井戸。


   井戸の中から女の手が伸びてくる……。

   女の手、
井戸の淵をつかむ……。

   井戸の中から女が這い上がってくる……。
   女の長い黒髪が顔を覆い隠している。

   女、井戸を出てどんどん……テレビ画面に近付いてくる!
   女!テレビ画面から外に出てくる!

――――――――――――――――――――――――――――

みなさんご存知の映画『リング』のシーンをお借りし
例としてシナリオにしてみました。

読み方は私なりのほんの一例ですが
決して大げさに演技っぽく読まなくてもいいと思います。

単に棒読みするだけでなく
「抑揚」、「間」、「強弱」を意識し
メリハリをつけて読むと
ト書きの雰囲気がより伝わるかもしれません。


シナリオの読み方はきっと、人それぞれ違うと思います。


もう、めちゃくちゃ大げさってほど
迫力をつけて読む方もいれば

恥ずかしかったり、音読が嫌いなため
淡々と読みたいという方もいるでしょう。


それぞれに個性があるので、
そのままでも全くかまわないと
思いますが

もし、工夫してみたいな、と好奇心が沸くのであれば
より自分のシナリオの面白さが伝わる読み方を試してみるのも
いいかと思います。



約一ヶ月でしょうか。

研修科課題研究 第二回 ゼミ発表のコツに
29回にもわたってお付き合いいただき
ありがとうございました。

ここで私が考え、書いたことが
微力ながらも、どこかで皆さんのお役に立つことがあれば
嬉しく思います。

また、読んでいて疑問があったり
反対意見があったり
何か新しい発想が生まれたり

みなさんの中に、より面白い発見が生まれたら
それも嬉しく思います。

長い間のご通読
どうもありがとうございました。










posted by lilac at 01:14| 研修科課題研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月29日

研修科課題研究 第二回 ゼミ発表のコツ28、 柱、背景(6)


前回は少し難しい話になってしまったかもしれません。
しかし、重要な話でした。

ただ、この「ゼミ発表のコツ」のテーマは
研修科の発表のために
伝わりやすいシナリオを書く、ということでした。

そこで今回は、もう少し分りやすいテーマで
映像の背景(柱)の使い方について
考えていきましょう。


ドラマ『銭ゲバ』や、
最新のフジヤングシナリオ大賞作品『輪廻の雨』
に、林の中で死体を埋めるシーンが登場します。

今回は、ちょっと恐いですが……

林の中に登場人物が死体を埋めるシーンの背景を例に
考えてみます。

下記の例のシナリオは、
便宜上、その林がどんな林なのかという描写は無しにしてあります。

――――――――――――――――――――――――――――

○林
   黒いフードの男がいる。
   男の前には大きな穴がある。
   穴の中には、ブルーシートに包まれた
   大きな何かがある。
   ブルーシートからにょきっと、人間の手がはみ出ている。
   男、スコップで必死に穴に土を入れ、穴を埋める。

――――――――――――――――――――――――――――

中に死体があることを示すために、例、では手を出しましたが
手を出さない方が想像力をかきたてられるので
僕は好きです。

さて。
では、この黒いフードの男が死体を埋めるシーン。
背景となっている林の雰囲気をいろいろと変えてみましょう。

まずは……
(これからの例は、便宜上、
 死体を埋めるシーンの描写を簡略化しています)

――――――――――――――――――――――――――――

○林(夜)
   黒いフードの男が穴に死体を埋めている。

――――――――――――――――――――――――――――

柱の時間を夜にしただけです。

今、『眠れる森』の再放送がフジでやっていますが
あの作品は、林ではありませんが、森の雰囲気の演出に
こだわった作品です。
昼間は穏やかで美しい森も、夜になれば黒々とし
恐ろしさを帯びてくる……。
そんな表現をしていると、解説されていました。

このように、背景の森を夜にするたけで
・暗い雰囲気
・陽のあたる場所で出来ない行為をしている罪悪さ
などが表現されてきます。

では、さらに夜の森を工夫してみましょう……

――――――――――――――――――――――――――――

○林(夜)
   大雨が降っている。
   黒いフードの男が穴に死体を埋めている。
   男のフードを、スコップを、雨が激しく打つ。
   地面、雨に打たれ土が弾け飛ぶ。

――――――――――――――――――――――――――――

課題に「雨」がありましたが
「夜」に、さらに「雨」を加えることで
伝わる内容のニュアンスが変わってきました。

・冷たそう
・痛そう
・こんな雨の中、何してるんだろう……

のような印象を持つ方もいるかもしれませんし

この激しい雨を、罪を打つ何か、を
投影する人もいるかもしれません。

黒沢明の『野良犬』でも
激しい雨が背景や登場人物をうつシーンがあります。
「雨の映像があるなぁ〜」
なんてボーっと見ているのは、甘いかもしれません。
つくり手はそれほど漠然と雨を入れているわけでは
ありません。

詳しくは知りませんが、
雨をつくりだすために、
わざわざ人口雨を降らせるシャワーなどの
機材などを用意し、
お金、時間、人と手間をかけ
雨を作り出しているはずです。

雨にはちゃんと意味があります。

では、また違う例をみてみましょ。


――――――――――――――――――――――――――――

○林(朝)
   木々の隙間から朝日が差し込む。
   小鳥のさえずりが聞こえる。
   黒いフードの男が穴に死体を埋めている。

――――――――――――――――――――――――――――

これもこれで、気持ち悪いのではないでしょうか。
つまり、恐怖心や不安感をあおることに成功している画です。

以前に
13日の金曜日の舞台となる湖が
「デビルレイク」などいかにも恐い名前ではなく
「クリスタルレイク」と、美しい名前であるため
そこで起きる惨劇の恐ろしさがより際立つと
紹介したように

朝の爽やかな森の中
一点だけ異様な画があるわけです。

周囲の爽やかさがと、
画面中央のおどろおどろしさを奇妙にも際立たせています。

もう少し極端な例を見てみましょう。




――――――――――――――――――――――――――――

○林
   木々の隙間から日差しが差し込む。
   黒いフードの男が穴に死体を埋めている。
   男から遠く向こうに丘が見え
   多くの家族連れがビニールシートの上で
   昼ごはんを食べている。
   その楽しげな声が響いてくる。
   男はしきりに死体を埋めている。

――――――――――――――――――――――――――――

死体を埋めるところ見られちゃうじゃなぁい?
とか、どっかのナカジーみたいなつっこみが来ることは
否めませんが
それはさておき

向こう側には平和な世界が見えるわけです。
つまり、日常です。
しかし、一つ、非日常の林に入り込めば
そこでは恐ろしい出来事が起こっているわけです。

これは単に演出として恐さを引き立たせる効果もありますが
深く考えると、
まさに私たちの社会の投影ではないでしょうか。

平和な日常と恐ろしい出来事が
隣りあわせで混在している。

しかし、昼ごはんを食べている家族連れが
林の中の恐ろしい出来事には全く気付かないように
わたしたちも隣で起きている恐ろしい出来事に
なかなか気付くことができません。

突然街を歩いていて、無差別に刺し殺される恐れもあります。
家、という壁を隔てて、その向こう側で
虐待、暴力、貧困、自殺などが起こっていても
全くわかりません。

最後のこの例は、背景や柱に何かを投影する
非常に映画的な考え方ですが

どこかでみなさんのシナリオ創作の
お役に立てればと思っています。


最後に、今回の例はちょっと恐ろしいものでしたが
ホラーばかりではなく
ラブストーリーにおいても
家族モノにおいても
コメディにおいても
柱、背景を考えることで
より作品を引き立てることができると思います。

それでは今回をもちまして
この柱(背景)というテーマを
終わりにしたいと思います。

次回からは、この長かった
「研修科課題研究 第二回 ゼミ発表のコツ」の最後

「シナリオの読み方」、について考えてみたいと思います。







posted by lilac at 18:00| 研修科課題研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月28日

研修科課題研究 第二回 ゼミ発表のコツ27、 柱、背景(5)



柱・・・つまり、映像の背景について
考えてみます。

以前に映画批評家の先生にシナリオを見せたとき
このように言われました。

映画の先生であって、シナリオの先生ではないので
シナリオスクールの先生とは着眼点が少し違います。
(どちらがいい、という問題ではなく
 着眼の種類が違うということです)

僕が書いたシナリオは
林の中を歩く、十歳の双子の兄と妹の小さな物語です。
生々しい話です。

簡単に言うと、グングン先に歩いていってしまう妹を
兄が大きな石で殴り殺してしまう、という話です。

林のそばの丘では、ビニールシートの上で
両親が日に当たりながらお昼休みをしています。
父親が妹の活発さをほめ、兄のドン臭さをなじった後
母親が兄の優しいところを褒めますが
その直後の林のシーンで、兄は妹を大きな石で撲殺しています。

シナリオスクールに入って最初に書いた作品です。
技術的な出来はいまいちなのですが
自分の中では、今まで書いた作品の中で
一番しっかり自分と世界とについて
向き合った作品だと思っています。

作品内容は余談に過ぎませんが
批評家の先生に読んでいただいたときに指摘されたことは
次のようなものでした。

「物語の背景になっているこの林は、どんな林なの?」


シナリオには、即物的に柱に林と書いただけで
ト書きに林の様子を書くこともしていません。

ドラマの先生ならば、ここはあまり注意しないところかもしれません
しかし、この先生は映画批評家の中でもかなり辛口で通っているという
噂もある先生ですから
やはり、「どういう映像を想定しているの?」ということに
こだわっているのです。

続いて言われました。


「この、背景の林、の感じがどんな風かによって
 物語自体も、物語の意味も、ぜんぜん変わってくるんだよ。
 どんよりとした林なのか。晴れの日差しが差し込む明るい林なのか。
 その他もろもろで……ぜんぜん変わってくる」



なぜ、そんなに背景が大事なのですか?
と私が問いかけた後の答えは
前回のブログに書いた通りです。

映像とは目に見えるもの以外の何者でもなく
その大半に背景が映りこんでいるのだから
背景にこだわらないと、映像作品の意味が非常に薄まる
ということでした。

僕がこの作品を書いたのには
それなりの意図や、
今の社会のある姿の投影がありました。

問題は、それを表現するにふさわしい背景
あるいは背景の雰囲気や様子、照明、色、音など……
それは一体何なのか?
ということです。



次回は僕の作品から離れて
しかし、林、という背景をテーマに
もう少し考えてみましょう。






posted by lilac at 18:00| 研修科課題研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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